8.決断

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◇◆ 「あれは⋯⋯、どうかと思うぞ」 「こじれてるんですかね、あの二人」  扉の隙間から覗き込んでいた二人の王子は呟いた。 「⋯⋯イルマが、フィスタを離れるなんて!」  王子たちの後ろにいた王太子の弱々しい声が続く。 「アレイド兄上、イルマはシェンバー王子に断られたんですよ。ちゃんと目を開けて見ていらっしゃいますか?」  ラウド王子は後ろを振り返り、長兄に呆れた声で言った。 「ほら、すっかりしょげ返ってますよ」  王子たちの目に、丸まった栗鼠(りす)のような弟の姿がうつった。  ◆◇ 「殿下! もういいじゃないですか! 断られたんですから!!」  なぜかセツは、猛烈に怒っている。 「れ、レイもレイです! 殿下が折角お心を決めたのに、あんな⋯⋯」 「サフィード」 「はい、殿下」 「ぼくは、また何か間違えたんだな」  一生懸命考えて決めたけれど、王子の心を傷つけた。だからあんなにはっきりと断られたんだ。  騎士は、少し考えてから言った。 「私は、少々違うと思いますが」 「なにが?」 「シェンバー王子は、殿下のことを考えて仰ったのではないでしょうか」 「はああ? 何を仰ってるんです! サフィード様!!」 「セツ、ちょっと黙って!」  ぼくは、セツを無理やり黙らせた。 「⋯⋯女神の許に行った時のことを覚えておいでですか?」 「うん」 「私は、殿下がお戻りにならないのなら、いっそ水底で果ててしまいたかった。私には、どんな時もずっと殿下お一人しか見えておりませんでした」 「サフィー⋯⋯」  サフィードは、穏やかな微笑みを浮かべていた。 「でも、シェンバー王子は、ご自分が女神の許に残るから、私と殿下をフィスタに戻してほしいと言われたのです。湖畔屋敷にいる間も度々立ち寄られて、私に殿下の話をしていかれました。⋯⋯本当は、優しい方なのだと思います」 「王子は⋯⋯ぼくのことを考えてくれたのかな」 「推測でしかありませんが」 「サフィーこそ、いつも優しい。今だってこうして慰めてくれる」  夜空の月でも取ろうとしてくれた。  ぼくの大事な守護騎士。 「ありがとう、サフィ―ド。どうしたらいいのか、もう一度考えてみる」
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