2.秘め事 【恋う】※

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 夕食のあと、少ししてからイルマ王子がシェンバー王子の部屋を訪れた。  レイは二人の前の卓に茶を置くと、部屋を下がる。  いつもと同じように、シェンバー王子は長椅子に腰かけている。  イルマ王子が隣に座れば、ふわりと甘い香りがした。  視力を失っても、全く見えなくなったのとは少し違う。  明るさと暗さを判断することは出来る。  そして、以前より嗅覚は鋭敏になった。  隣に座ったイルマの髪にシェンバーは触れた。  ふわふわした髪は、わずかに湿っていた。 「濡れてる? それに、花の香りがする」 「⋯⋯さっき、湯を浴びたから」 「そうか⋯⋯」  シェンバーが甘い香りのする髪を撫でれば、イルマは肩口にこつんと頭を乗せた。  ──可愛いな。  以前は毛を逆立てた猫のようだったのに。  いつのまにか、隣で体を擦り寄せるようになった。  フィスタの王族たちは仲がいい。  末の王子のイルマは、国王夫妻だけでなく兄姉にも可愛がられていた。  そのせいだろうか。一旦心を許すと、気軽に甘えてくる。  そっと髪に口づけると、イルマは顔の向きを変えてシェンバーを見上げた。  イルマの手が、シェンバーの頬に触れた。ほっそりした手はいつも、ほんの少しシェンバーより温かい。その温かさに、シェンバーは自分から擦り寄ってしまいたくなる。 「⋯⋯シェン、大好き」  ──小さく呟くこの生き物を、どうしたらいいのだろう。  自分への気持ちを、ただまっすぐに伝えてくる。そのたびに、激しく波打つこの気持ちを、どう伝えたらいいのだろう。  互いの吐息が近づいて、やわらかい感触が唇に触れる。  シェンバーは、唇の合間から舌を忍び込ませた。  自分よりも小ぶりなイルマの舌の上を、ちろちろと嬲っていく。 「⋯⋯んっ、シェン⋯⋯」  イルマの口から甘い声が漏れた。
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