1.あなたに焦がれて

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「⋯⋯最近話題だと言うことは、まだあまり出回ってないってこと?」 「左様です。原料が少なく、穫れる量に限りがございます」  とろりと粘度の高い透明な液体が、玻璃の小瓶に入っている。  香油は、王室御用達の店がある。他から買わなくても、すぐに手に入れることができた。  だが、王室御用達の香油は効き目が良すぎる。最近、寝込む日が多くなって、イルマ様のお体が心配だ。  サウルの持参する品は、どれも品質が良くて信頼がもてる。 「⋯⋯ううーん。確かめもしないで、お渡しするわけにはいかないしな」 「それは、お試し用の品にございますので。どうぞ、セツ様がお納めください」  このぐらいなら、いいかもしれない。  僕は、こくりと頷いた。  サウルの瞳がきらりと光ったことには、気づかなかった。  ⋯⋯どうしよう。  香油の瓶を前にして、僕は悩み続けていた。  品質がいいのであれば、王子たちにお勧めしたい。だが、使用してみなければ、いいも悪いもわからない。安全性のわからぬものを、そもそも渡すことは出来ないのだ。  誰か、信頼のおける者に試してもらうべきか、それとも──。 「セツ様、買い物は済んだのですか?」  ちょうど、レイが部屋に入ってきた。 「な! なななな、なんですって!?」 「だから、サウルがくれた品を確かめたいんだ。品質が良くて使い心地も良ければ、イルマ様たちに使っていただいてもいいかもしれない。でも、わけのわからぬものを渡すことはできないだろう?」 「それは、そうですよ。だからって!」  レイは怒っている。  最初、真っ赤だったのが青くなり、今はまた、赤くなっている。 「あ、レイ! レイは、これを使うような相手はいない?」  香油の入った瓶を手に、そう聞いただけだったのに。  ⋯⋯なぜ怒っているんだろう? さっぱりわからない。  言い方が悪かったんだろうか。以前、イルマ様に言われたことがある。  セツは、言葉の使い方がおかしいと。  レイは、大きく息を吸って、呼吸を整えた。  僕の目を真直ぐに睨みつけてくる。ちょっと、怖い。
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