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半日も無断でいなくなった僕を、イルマ様は大層心配してくださった。
困ったことに、もういいから休むようにと言われた。
「セツ! これは命令だよ。ぼくのことはいいから、今夜は早く休んで!!」
「⋯⋯わかりました」
自室のベッドに寝転がって、ふう、とため息をつく。
ベッドの脇の小卓には件の香油の瓶が乗っている。
「そうだ!」
⋯⋯そもそも、自分で試してみようと思っていたんだった。
香油の瓶を、開けてみた。
透明でとろみを帯びている。ほんのり、柑橘のような爽やかな香りがする。
僕は、服を脱いだ。
「⋯⋯ん、はッ」
とろりとした液体を指先に取って、自分の後孔に塗り付けた。それだけだったのに。
自分の前は、さっきから緩く勃ち上がって、透明な雫を零し続けている。
後ろは、ひくひくと疼いて止まらない。
ベッドにうつ伏せて、顔を布に埋めた。
必死に快感を抑えようとしても、布に触れたところが刺激になる。
「ひ! あッ!!」
自分で先端を擦りつければ、腰が止まらなくなる。
──これ、絶対、媚薬が入ってる⋯⋯。
にこにこと愛想のいい商人の顔が浮かんだ。
コンコン。
扉を叩く音がする。
コンコン、コンコン。
「セツ様? 具合が悪いとお聞きしましたが」
⋯⋯どうして、レイが?
ちょっと、今は! 今はダメだ!!
「あっ! ⋯⋯んっ」
抑えようとしたら、変に声が出る。
「セツ様!? どうなさったのです! 大丈夫ですか!」
ガチャガチャと、扉を開けようとする音がする。
え⋯⋯え!? 冗談じゃない!! 鍵、鍵はちゃんとかけただろうか。
汗がこめかみを伝う。冷汗なのか興奮からなのか、わからない。
「開いた!」
──!!!!!
「セツ様?」
「⋯⋯レイ⋯⋯ふ⋯⋯うッ」
呆然と立ちすくむレイの姿が、視界の端に映った。
小卓の上の香油と僕を代わる代わる見ている。
⋯⋯もう、死にたい。
裸でうつ伏せのまま喘いでる姿なんて、最悪じゃないか。
レイは、すぐに向きを変えて扉に向かった。
ああ、そうだよな。見たくもないはずだ。
目が熱くなって、鼻の奥がツンとする。
かちゃり、と音がする。
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