time ing

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――好きだ。 ――大事よりも大事なものがあるとわかった。 ――春に会いたい。 無愛想な顔。無口だけど温かい心。私に触れる手。 いつも私を守ってくれようとして、そして守ってくれた。 きっと私はもう手遅れなんだ。 もうこの感情は何にもならない。 おかしいと思ったのか、俺の隣来る?とスペースを空けてくれる彰。 『どうしよう……苦しいよ…』 「それだけ存在が大きいってことだよ」 何がとか何をとか言ってないのに、わかっているかのように返される。 「優ちゃんね、営業してるんだよ」 『え……、え…!?』 「まぁお得意様との兼ね合いとか上司からの指示でしたくない仕事もあるみたい」 ま、そういうことよ、と私を優のソファーに座らせる。 『そういうことって何さ』 「優ちゃんの心はずっと変わってないよってこと」 『ってかなんでそんな知ったような言い方するの』 「優ちゃんのことなら知ってるし、春ちゃんはわかりやすいから」 『…そんなに出てる?』 「いや、ダダ漏れってことはないけど、俺はすぐわかったよ」 『……超能力者なの?』 「そうなの。モテモテの実を食べてモテすぎちゃう能力があるの」 出た。しょーもない。 「そんな俺っちからアドバイスを与えようではないか。 早く手を掴みな。 いつなくなるかわからないのが世の常なんだから」 核心を突かれて、お酒を飲む手を止める。 「勿体ぶる必要も待ってる必要もないじゃん。 欲しいものがあるなら自分から行かなきゃ。 春ちゃんならぜーったい大丈夫だから。 あ、俺の枠空けとくから、もしもがあれば慰めてあげられるよ」 『…うん』
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