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―優side―
別に何をするでもなく定期的に来ている倉庫。
“あれから”ここでは誰とも会わなかったのに、今日はよく知るバイクが1台停まっている。
中に入れば、酒やつまみが広がったテーブルとぐーすか寝ているそいつ。
一人で呑んだのかと思いながら俺のソファーに座ろうとすると、息が止まった。
どうして……。
やっと…やっと会えた…。
彰と一緒にいたのか…?
柄にもなく狼狽える自分に驚きながらも寝顔を見つめる。
どうしてここにいるとか、どうして彰と一緒なんだとか、今までどうしてたとか、山ほど聞きたいことがある。
でもそんなものを差し置いて溢れてくるこの感情は何だ。
十分に知っているが、改めて実感させられる。
ああ、やっぱり俺は………。
気だるく持ち上がる瞼。
幾度かの瞬き。
いくらか流れる時間。
俺の頬に伸びる温かい手。
壊れてしまいそうな心臓をどうにか機能させて、音を待つ。
『……優…』
スル、スル、と俺の頬を撫でる指が止まり、瞳が完全に開いて、ムクリと起き上がった。
『なんで……』
――泣いてるの…?
………。
自分でもわからない。
意思などなく勝手に出たんだ。
いつも安らぎをくれるその声をようやく聞けて。
いや、それが全てで。
涙の存在になど、気付きもしなかった。
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