6人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、雪の降り積もる冬の日のことだった。
ーーザク、ザク、ザク……。
降り積もって固くなった雪を踏みしめながら、バス停から家までの道のりを僕は歩いていた。
ーーザク、ザク、ザク……。
周りには誰もいなかった。僕だけの足音が冷たく澄んだ空気に混ざって溶けていく。僕だけの足跡が、僕の歩いてきた道を辿って僕に付いてきていた。
ーーザク、ザク、ザク……。
ーーザク、ザク、ザク……。
周りには誰もいないはずなのに、僕のものではない足音が聞こえてくる。
僕は立ち止まって後ろを振り返った。
ーーザク、ザク、ザク……。
僕の後ろを、僕のものではない足跡がついてきている。
ーーザク、ザク、ザク……。
僕よりも少し小さめサイズ、恐らく女性のものと見られるその足跡は、呆然と立ち止まる僕の横をすり抜け、僕の前を歩いていった。
足跡だけが見えていて、どんなに目を凝らしても、人の姿は見えなかった。
足跡だけのそれは、どんどん先へ先へと進んでいく。
だけど不思議と怖いとは思わなかった。
僕は面白くなって、その足跡を追いかけてみることにした。
最初のコメントを投稿しよう!