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ーーザク、ザク、ザク……。
ーーザク、ザク、ザク……。
真っ白な雪の上に、2人分の足跡が刻まれていく。この景色の中には、僕1人しかいないのに。
ーーザク、ザク、ザク……。
ーーザク、ザク、ザク……。
僕はもう、家に帰ることなんてすっかり忘れ、夢中になってその小さな足跡を追いかけた。
ーーザク、ザク……。
公園までたどり着くと、その足跡は突然立ち止まり、つま先の向きをくるりと180度回転させた。
つまりは僕と向かい合う形となったその足跡は、その場でジタバタと足踏みを始める。
まるで「なんでついてくるのよ!」とでも言っているかのようだ。
「ごめん、なんだか面白くてつい……」
慌ててそう言ったけれど、足跡の苛立ったような足踏みは止まることを知らない。
それを見て僕の中で、この足跡にも僕の姿が見えないのではないか、という考えが浮かんだ。向こうにも足跡しか見えていないのだとしたら……。
『ごめん』
僕は僕たちの足跡の横、まだ何も刻まれていない真っ白な雪の上に、つま先でその3文字を書いた。
すると足跡も、僕たちの足跡の横に何か書き始める。
『みえるの?』
僕もその更に横に答えを書き足した。
『うん』
するとその足跡は、よろけるように僕の背後に3歩分の足跡を刻んだ。まるで僕に飛びつこうとして僕の身体をすり抜けてしまったみたいに。
『あしあとだけ』
僕は慌てて補足を付け足した。
足跡は落胆したようにとぼとぼと僕の前に戻ってくる。
『ごめん』
『べつに』
そんな言葉を並べたあと、足跡は悲しそうに公園を出て行く。なんだか「ついてこないで」とでも言っているようで、追いかけることが出来ない。仕方なく僕も自宅への足跡を刻み始めた。
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