森の子

1/11
前へ
/29ページ
次へ

森の子

最近よくこの森に来る女の子がいる。 あたしはその子のことを見たことあるが、話し掛けたことはなかった。 人には妖精が見えない。 あたしは妖精だから、女の子には見えない。 けれど彼女は、毎日のように遊びに来てくれる。 あたしは嬉しくて仕方がなかった。 毎日のように来てくれる彼女と友達になりたいと思ってしまった。 今日も彼女はやって来て木々に話し掛ける。 そして動物達に挨拶する。 彼女は不思議だった。 動物達が彼女をみても全く怖がらない。むしろ擦り寄っていくような状態だ。 だから益々彼女という存在が気になった。 あたしは、ソーっと彼女に近付いてみた。木の陰に隠れて、じっと彼女を見つめてみる。 「おはよう!」 あたしの気配を察知したのか、彼女は後ろを振り返る。 「あれ?」 間一髪、あたしは彼女の向いている方向の逆側に回った。 ホッと胸を撫で下ろして安心していたら、彼女の顔が目の前にあった。 「!!」 彼女にはあたしが見えているようだ。 まさかとは思ったけれど、彼女はあたしをジッと見ている。 「さっきの気配は貴方だったのね」 彼女はニコッと微笑むと、手を差し出してきた。 「ちょっとあたしの手大きいけど、握手しよ。初めまして!仲良くなった印だよ」 あたしは躊躇いながらもゆっくり手を伸ばした。 彼女の手はあたしくらいに大きいから、彼女の指がを握る。 「これでもう友達だね」 彼女ははにかんだ。だからあたしも笑ってみせた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加