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あたしは女の子と仲良くなったけれど、秘密を言えないままでいた。
言えば彼女が怖がってしまうのではないかと不安が言おうとする度に、脳裏を過ぎる。
それから秋がきて冬がきて、春になった。
女の子が来る前はいつも、残酷な現状に向かい合っていた。
人間が森林伐採し、山を削り新しい住宅地をつくっている。
彼女には言わなかったけれど、もうすぐこの山も開拓されてしまう。
つまりは、あたしは死んでしまう。あたしは山の精霊。山自身があたしなのだ。
「彼女が知ったら、また悲しそうな顔をしてしまう」
それだけは嫌だった。笑顔のままでいてほしかった。
彼女にはいつも笑っていてほしい。
だからどうか、彼女が悲しい顔をしませんように。
願っていると、野山を駆け登る音が聞こえた。
前まで待ち遠しかった瞬間だったのに、今は悲しみの足跡に聞こえる。
彼女は息を切らしてあたしに近付く。
「妖精さん!もうすぐこの山がなくなっちゃう。逃げなきゃ」
彼女は現実を知ってしまった。ハァハァと息を整えているけれど、ずっと悲しい表情を浮かべている。
「ごめん。あたしはここから動けないんだ」
そんなの嘘。
だけど、逃げてもこの山がなくなればあたしも消えてしまう。
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