プロローグ

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プロローグ

「ここって、有名な自殺の名所なんだよね」  突然、後ろから掛けられた声に反応した俺の体は、一瞬、眼下に広がる雑踏の中へと飛び込む寸前だった。 「ごめんなさい。躊躇っている所に声を掛けたら、驚いて落ちていたところだね」 「躊躇っていない!俺は誰からも期待されていない人間だ。不必要なのさ・・・」  そう叫んだ俺に彼女はゆっくりと近づきながら、「そう思っているのは自分だけじゃないかな?言葉に表せなくて、でも、期待している人はいるよ。あなたの両親とか・・・。言葉では表現出来ないだけ。でも、あなたが死んだらずっと悲しむよ。伝えられなかった誉め言葉を言えずに後悔する日々・・・。少しは、期待してみても良いと思う。両親と同じ気持ちだと思うよ」と長々と説教をしてきた。  俺は彼女の言葉を信用した訳じゃないが、両親が期待しているという言葉が気になった瞬間、帰路の道を歩いていた。  そんな俺に不思議な感覚を味合わせた彼女は、矢沢千恵と名乗った。  そしてその矢沢千恵は、次の日の朝、海岸で死んでしまった。
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