140字SS 71-80

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140字SS 71-80

-71-  吹雪で山小屋に三日三晩閉じ込められた。 「仕方ねえ、限界だ」  地元の案内人が床板を剥ぐ。 「旅人さん、ここで見たことは一切他言するな」  地下に繋がる階段。降りてゆくと、やがて広々とした場所に出た。  これは……地下街? 「表向きは貧しい方が、他国から狙われにくいんだ」  温泉に浸かって思った。俺ここに住む。 -72-  雪が降ってきた。寒いな。積もるかな。止まないかな。いつまでこんなに寒いんだろう。  凍えていたら、顔見知りの彼女がやって来て、そっと抱きしめてくれた。 「寒いね。ねえ、そろそろうちの子にならない?」  その手の温かさに、思わずニャア、と応えた。 -73-  氷の城で雪が降る。  先日女王に迎えられた少年が、魔法の練習をしているのだ。  だがなかなか上達しない。 「君は何を思って雪を創る?」  氷の兵士は尋ねた。 「上手になって、女王に喜んでもらうんだ。僕を拾ってくれたから」 「それでは無理だ」  君の心にはまだ温もりが残っている。  だから雪が溶けてしまう—— -74-  田舎の駅。夜の雪が線路に降り積もる。運行遅延の情報が中止に変わった。 「マジか……」  誰もいないホームで呟くと、遠くから光が近づいてきた。 「え?」  人影を乗せて走り抜けてゆく車両。  しかし見直すと、線路には踏まれた跡のない雪が変わらず積もっている。  後日地元の人に話すと、命拾いしたな、と言われた。  もしあの列車が目の前で停まっていたら、乗り込んでしまっていただろう。  だが、あれは……。 -75-  あの山に入ってはならん。かつて愛した男を氷漬けにした雪女がおるでな。  この時期、奴は温もりに飢えておる。  人や動物を襲って喰らい、その熱で自分も人になろうと願う。いつか男と添い遂げられるモノになりたいと。  愚かなことよ。愛する者まで喰らわねば、人なんぞには()ちぬのに。 -76-  猫の中にも異能を持つものがいる。  その名も『化けの皮』。  自分以外のものに姿を変えられる能力だ。 「お前……路地裏ボスのフリをして餌を漁っていたのか!」  猫は猫に化けるのが一番自然。野良なら。 「じゃあ猫耳美少女に変化したうちの飼い猫は……」 「猫界隈では相当な変態ですね」 -77-  脱衣所に入ると、いてはならないものがいた。  大きな鎌に骸骨の顔。長いローブは何故か真っ白だが、どう見ても死神だ。 「おや、私が見えるとは珍しい」 「な、なんだお前」 「お分かりでしょう。……お迎えです」 「馬鹿な。俺はまだ若いし、体も健康だ」 「貴方ではなく、この洗濯機です。私、家電担当でして」 -78-  PCの動作がおかしいので、友人に見てもらう。スマホで調べた検索結果とはまるで違う、古い記事ばかり出してくるのだ。 「……このPC、冥界に繋がってる」  友人が漏らした。 「今は存在しないHP、サービス終了したゲーム、消された書き込み——ネットの『あの世』に繋がってる」  マジか。つまり俺の黒歴史(ポエム)もここに。 -79-  0時の鐘が鳴り始めると、シンデレラは慌てて駆け出しました。  王子が後を追うと、舞踏会の間に降り積もった雪の上に彼女の足跡が残っています。  馬に乗って跡を辿ると、湖の手前で途切れておりました。  辺りを見回せば白い鶴が飛び立ってゆくところ。  王子は先日助けた鶴を思い出すのでした。 -80-  前世の相棒は鳥に転生していた。  九官鳥だから、言葉で意思疎通ができるのがせめてもの救いとはいえ。 「話し相手にはなっても、役には立たないな……」 「阿呆。鳥には人に見えない色が見える——憑いてるヤツらがわかる、って事だ。  さっさと俺をこの檻から出せ。祓い屋復活だ」 「今まだ夜だぞ」 (※鳥の目は紫外線が見えるため、人間とはものの見え方が違うらしいです)
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