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但し、藤田は華奢な春香より肉感に勝り官能的な幸代との性行為を満喫していた。幸代は天分もあるが、プールのある裕福な家庭で育ったお陰で水泳と栄養価の高い食事が物を言ってプロポーションの黄金比を獲得し、スタイルが抜群だから然もありなん。しかし、幸代は不妊症で子供が出来なかった。その代わり春香が妊娠した。彼女は直近5ヶ月で性交したのは藤田とだけだから彼の子であることは間違いなかった。
藤田は春香と別れ際、関係を終わらせたくないが為に妊娠したら連絡してくれ、養育費は払うから子を産んで育ててくれと彼女に言っておいたからその朗報を伝える携帯が鳴った。
藤田は久しぶりに春香と話してみると、愁いを帯びた彼女の声がもろに耳朶に響いて来て万感胸に迫り、無性に彼女に会いたくて堪らなくなって、その足で早速、彼女のアパートを訪ねた。会うのは約二ヶ月ぶりだが、春香は頬がこけ大分やつれた感じだった。この日まで藤田を諦めきれなくて妊娠するのを心待ちにしていた春香もまた彼に会いたくて堪らなくなっていたし、一本気だから彼だけを思っていたのだ。
「嗚呼、会いたかった!春香!」と藤田が思わず叫ぶと、春香は感激して、「私もよ、直樹さん」と声を震わせて答えるなり涙ぐんで二人は自ずと篤く抱き合った。
虫が良すぎる気がしたが、この再会が夫婦以外の男女関係、取りも直さず不倫を結婚生活と共に成立させる突破口に成り得ると思った藤田は、「今でも僕は春香を愛している。だから君への支援を続けるし君との付き合いも続けるよ」と告げると、春香はすっかり生気を取り戻した表情になって頷いて、「私は直樹さんだけを愛しています」ときっぱり言った。
金には全く困らない藤田にとって春香の答えはチクリと刺す意味はあるにせよ願ってもないことで謂わば幸代が肉体的に満足させてくれる存在なら春香は精神的に満足させてくれる存在となり、二人の美女と同時に関係が持てることになって差し詰め両手に花といったところか。
回り回って曲がりなりにも理想の関係を手に入れた藤田。定めし彼は今度、幸代に内緒で春香と海辺の別荘へ行った日には、再び砂浜に歩調の揃った足跡を残すことであろう。
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