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その日、彼女の目には一人の酔っぱらったサラリーマンが引っかかった。
ふらふらとした足取りの彼に、占い師は声をかけた。
「ねえ、あなた」
「何だい?」
「あなた、良くない相が出ているわよ。良かったら、詳しく見てあげましょうか?」
だが、サラリーマンはその申し出を花で笑い飛ばした。
「はっ、その手に乗るもんか。そうやって金をとる気だろう。生憎、今の俺はすっからかんだ。酒代に全部使っちまったんでな」
きつい口調で拒絶されるのも慣れっこだった。
「ごめんなさい、声をかけちゃって。一言だけ。私からあなたへの忠告よ。あなたには女難の相が出ているわ。それも、相当に厳しい奴よ。ありとあらゆる女性に気を付けて」
「今まさに女難に遭遇してるぞ。お前に捕まってる事だ!!」
そう言い捨てて彼は歩き始めた。
占い師はそれ以上何も言わず、男の背中をしばし見送った。
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