女難の相

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 それから数分の後。  ドォン、という衝撃音が繁華街に響き、それと同時に占い師のテーブルも揺れた。  片肘を付いていた占い師は、その衝撃で覿面に体勢を崩した。 「何よ一体……」  周囲を見回せば、少し先に人だかりができていた。  その中央に見えるのは、地面に対して垂直に突き立った大きな看板だった。 「落ちて……来たの?」  占い師が見上げたビルの窓からも、複数の人間が顔を出して下を覗きこんでいる。  中には上と下を交互に見ている姿もあった。  さらに人混みの中からは、救急車だの警察だのを呼べと言った声も聞こえた。  現場は見ていないが、看板の下には先ほどのサラリーマンがいるのだろうと占い師は考えた。  看板の真ん中に、場違いに綺麗な笑顔を浮かべた女優が横向きに写っていたからだ。
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