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生きろ。
庭の奥、物置小屋辺り。ガサガサ、バサバサ音がする。
何かしら。私はドキドキしながら手にホウキを持ち近づいた。カエルかネズミか小さな血痕の足跡が点々と物置小屋に繋がっている。 ガサガサ、黒く艶めく翼が血染めの塊に覆い被さっている。
ハッと息を飲んだ。黒く艶めく瞳と目が合った。カラスだ。
怖さで身がすくんだが不思議にもカラスの生命力溢れる瞳に引き寄せられる。
身動き出来ない私を横目にカラスは血染めの塊を向いの公園にある大木に運んで行った。
小さなカラス達が赤い塊を取り合っている。
世界中コロナに翻弄され増々感染は拡大し、医療崩壊も目前。人々は混乱と不安と終りの見えないコロナとの闘いに辟易し、疲れ、混沌とした毎日だ。
「生きている」事を疎かにした日々に慣れてしまった私。カラスのあの瞳が「生きろ」と私の魂を呼び覚ました。
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