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その日は、抜けるような青空だった。晴れやかな日にはぴったりの天候だ。
彼は、先ほど見た光景を思い出していた。
金で装飾された白い鏡台。そこに映し出された彼女は、真っ白なドレスに包まれていた。ビスチェのドレスにジュエリーのネックレス、そして小さなティアラ。まるで絵本に出てくるお姫様だ。
皆が彼女を『綺麗』と言った。彼も、そう思った。
そんな彼女に、彼は薔薇のブーケを贈った。13本の真っ白な薔薇を。
彼女は喜んだ。何か言いたげだったが、お互いに何も言わないことにした。
彼女の”夫”の姿も見た。海外赴任中に出会ったのだとか。
「Wow! とっても綺麗だよ、僕の花嫁! 本の中から抜け出して来たのかい?」
そう言っているのが、扉越しに聞こえた。
白のタキシードは、彼の白い肌と金色の髪によく似合っていた。まるで王子様のような出で立ちで、彼女のことをお姫様と呼ぶ。
どれもこれも、彼には言えそうにない言葉だった。
花嫁と花婿が控室から出る様子を見て、彼は会場を後にした。彼女の腕には、彼が作った白薔薇のブーケが握られていた。それで十分だった。
白い薔薇の花言葉は、『清純』そして『永遠の友情』。
届けた時、彼はメッセージカードを添えていた。
――結婚おめでとう。元気で。
彼女がそのカードをどうしたのかは、わからない。
誕生日に結婚式を挙げた彼女は、その翌日、夫のいる国へと旅立って行った。
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