赤い薔薇は、またいつか

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「このお花、なんていうの?」  小さな手が、花びらを幾重にも重ねて広がる、真っ赤な花を手にした。 「……薔薇」 「きれいだね。わたし、この花だいすき!」  そう言った彼女の笑顔は、その花と比べて何一つ劣らない眩いものだった。  だから彼は、つい口にしてしまった。 「じゃあ、あげる」 「ほんとう? ありがとう」  彼は薔薇を一輪手に取った。枝と棘を丁寧に取り去り、短いリボンを巻いて、彼女に差し出した。 「今日ね、誕生日なの。すごく嬉しい」 「じゃあ……来年も、あげる」  彼がそう言うと、彼女は、手にした花よりも美しく顔を綻ばせた。
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