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父のヌナカワヒコは一人娘のヌナカワヒメを幼い頃からまるで男の子のように育てた。いずれは国を継がせるつもりだったからなのか、国向きの仕事を教え出すのも早かった。
屋外での作業も積極的にさせたし、乗馬も力仕事もさせた。冷たい川に足を浸けての翡翠とりも、無論させた。そのおかげでヌナカワは誰よりも上手く石を探せるのだった。1人になりたいときは、翡翠取りに出かけるほどだった。
男勝りに育てられたこともあって、ヌナカワは男性を意識したことはなかった。ずっと近くにいたサガワヒコのことも、男性という感覚ではなく、部下という捉え方をしていた。
「あの…あなたは?」
ヌナカワの問いかけに、男性はこちらを向いた。正面から向き合う形になって、ヌナカワの心臓はますます高鳴った。
男性はまだ若かった。20歳をいくつも越えてはいないだろう。背が高く、均整の取れた体つきをしている。そして左右が完璧に整った顔立ちをしていた。
程よく日焼けした張りのある肌。弓形の漆黒の眉に象られた大きな目。ほっそりと高い鼻梁。笑みを含んだような唇。額は広く、輪郭はほっそりとしながら、男性らしさを失わない鋭い顎が印象的だった。
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