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(太陽の光が人の姿を取ったらこんなふうになるのだろうか?)
ヌナカワの鼓動はますます速くなった。
「翡翠の女王…噂に違わぬ美しい方だ」
男は目をほんの少し細めながら言った。
「私はオオナムチという者。翡翠の美しさを聞きつけて参ったのだが、翡翠よりも美しいものを見つけてしまったようだ」
まるで星が降るような美しい声で、男は言った。
雷にでも打たれたように動けないでいるヌナカワのすぐ近くまで男は近づいてきて、静かにため息をついた。
「ヌナカワヒメ、あなたはとても若くて美しい。川底を探って拾い集めた翡翠たちよりも、もっと。あなたと一緒に永遠に暮らして、あなたが年老いてもまだ美しいその姿を、私だけのものにしておきたい」
オオナムチと名乗った男は、歌うように言って、ヌナカワを抱きすくめようと手を伸ばした。
ヌナカワはひらりと身をかわした。
あまりの素早さとしなやかな身のこなしに、オオナムチは驚いたように一歩下がった。
ヌナカワは音を立てて打つ心臓に手を当てて、大きく息をひとつ吐くと、言った。
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