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(序)
「ずっと側にいて欲しいか?」
あなたは星が降ってくるような声で、私に聞いた。私は静かに首を横に振った。本当はいつも一緒にいたい。あなたにとってただ一人の女性でありたい。でも胸の奥で、あなたは独り占め出来ない人だと、そう納得している私がいる。
「あなたはあなたの道を行くべきだと思うわ。ずっと一緒にいられなくてごめんなさい」
私の声はいつもより優しかったと思う。私を見つめるあなたの目も、いつもより優しかった。抱きしめてくれる腕もいつもより強くて温かい。
それは別れが近付いているのをお互いが確認しあえたから。
私はあなたを待ち続ける女性にはなれない。
それはあなたの世界で、別の女性が演じているはず。
私は自分の世界での主役という役割を演じ切るだけ。
あなたの世界は私の世界とほんの短い時間交わっただけ。
今の喜びを噛み締めよう。
そうすればあなたのいない世界でも、私はきっと生きていけるから。
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