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その3 イメージ
突然ですが、
これをお読みになっている読者様は、タクシードライバーと聞くとどういうイメージを抱くでしょうか。
中島みゆきの歌の歌詞にこういう行りがあります。
「タクシードライバー
苦労人と見えて
私の泣き顔
見て見ぬふり
天気予報が今夜も
はずれた話と
野球の話ばかり
何度も何度も
繰り返す」
※『タクシードライバー』(中島みゆき作詞曲)より抜粋
私はこの歌を中学生の時に聞きました。
その時はタクシードライバーよりも、車の中で傷心して泣いている人の事にしか気が行きませんでしたし、ドライバーに対しても『運転しているおじさん』というイメージしか持っていませんでした。
実際、世の中のタクシードライバーに対するイメージもそんな物かも知れません(最近は女性ドライバーも増えてきましたが)。
でも今思えば、この歌に登場しているドライバーさんはかなりのベテランだと思います。
タクシードライバーは、お客様に不快な気持ちを抱かせない様に常に全神経を集中しています。
暑くないかな?寒くないかな?車が揺れすぎてないかな?道順を理解してくれてるかな?周囲の車との距離は十分かな?不安を感じてないかな?お客様の体調は大丈夫かな?退屈してないかな?
等々。
それら全てがドライバー自身のハンドル捌きにかかっているのですから、私の様な新米ドライバーはいつもヒヤヒヤしながら、且つそれを悟られない様に努力するのがやっとです。
たいていバレてますけど……。
その点、
この歌詞の中のドライバーさんは、お客様に不安を抱かせないどころか、安心できる空間を与えています。
ぎこちないながらも、取り留めの無い話で場を和まそうとする余裕と優しさも、それこそ『苦労人』だから出来る術なのかも知れません。
安心できる人。
そういうタクシードライバーに私はなりたい。
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