その40 若見え

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その40 若見え

 自慢をするつもりはありませんが、私はたいてい歳より若く見られます。  先日、  お客様と昭和の名車の話で盛り上がった時、 「運転手さんずいぶん知ってるね、若いのに」  と言われましたので、私は素直に 「こう見えても、私五十二ですよ」  と答えると、素でビックリされました。  声も若いそうです。(イケヴォとは言ってくれませんでしたが……)  そして昨日、会社の先輩に言われました。 「岩田君、最近若いね」 「え、最近?」 「乗務員証の写真、老けて見えるよ」 (おいおい、言い方……)  と思いましたが、確かにそうです。  タクシードライバーになったばかりの半年前に撮った『乗務員証』の写真は、本当にヤツレたおじさんという感じです。  先輩の言った言葉は世辞ではなく、事実の様です。  じゃ、どうして? 1、動画サイトを見て始めた『有酸素運動』?  →運動量は前職の方が遥かに多いので、当てはまりません。 2、腸活?  →意識して生野菜や乳製品を摂る様にしていますが、ベツに今に始まった事ではありません。よって、これも当てはまりません。 3、アニメ好き?  →アニメの好きなおじさんは私以外にもたくさんいます。よってこれも当てはまりません。 4、マスクの着用?  →目元とおでこしか見えないので、これはそうとう『若見えポイント』高いです。でも、半年前も常時着用していましたので、先輩の言葉には当てはまりません。 5、ストレスの軽減?  →月並みですが、これが一番当てはまる気がします。 『その1』で少し触れましたが、前職でのストレスはハンパじゃありませんでした。もし私が二十年若かったら、自殺の道を選んでいたかも知れません。  そんな私がタクシードライバーになったばかりの半年前は『自己否定』の権化でした。それがモロ顔に出てたのでしょうね。 『完全歩合制』の今の仕事は、がんばってもサボっても全て自分に返って来ます。しかも『収入』というダイレクトな形で。  でも、タクシードライバーは水商売ですから、いい日もあれば悪い日もあります。  悪い日でも 「まあ、いいや。明日がんばろう」  と気持ちの切り替えが出来ます。  誰かに言われるのではなく、自分で判断する。責任も全て自分。  成績が上がらないからと言って、上司に人格を否定される事はありません。  自己否定をする暇なんてないし、する必要もありません。  これがストレスの軽減になり、やりがいにつながっている気がします。  昔、恩師がこんな事を言っていました。 「人は顔だよ」  今はその意味がよくわかります。 2021.4.26
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