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序
「転入生の神等薇子さんです。皆さん、仲良くするように」
担任の相浦せりかがお決まりの転校生紹介の言葉を言う。
俺は「ふうん」と眼を向けて、彼女……神等薇子を見た。
肩甲骨まで伸びた漆黒の美しい髪。ヘアアイロンかけたんじゃないかと思われるほどのクセの一つもないまっすぐストレート。長い睫毛に縁取られた深い闇色の瞳。かくも整った容顔は間違いなく美人の域に軽く達する。その上短めのプリーツスカートからのぞく脚はすらりと長く、顔だけではなくスタイルも飛び抜けて良いのは制服の上からでも分かった。
依頼主の言った通りだ。
俺・高橋文護は思った。
あの姿で人を惑わして、彼女は獲物を狩る。
何年経ってもその美しい容姿は衰えない。
だが、獲物を惑わし狩るのに適した体は老いない為に、時に長く同じ地に留まることも許してはくれない。18歳の若い娘が全く老いないというのは、服装や髪型で誤魔化しても5年からせいぜい10年居られたらいいところ。余儀なく次なる地に、転々と流浪しては新たなる獲物を探し生き長らえる。
そう。彼女は不死の化け物。
いわゆる吸血鬼というものだった。
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