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依頼主の神等薔介は、名字から簡単に推測できるように神等薇子の親戚筋に当たると言っていた。
200歳近い彼女の存在を知り、なんとか彼女の痛ましい生を止めたいそうだ。
吸血鬼の親戚は吸血鬼じゃないかって?
そんなの愚問だ。
吸血鬼は、元々は人間だ。
吸血鬼に魅入られ、吸血鬼に引き入れられた人間が不死の怪物・吸血鬼となる。しかも誰でも良いとは限らない。吸血鬼に気に入られた者だけだ。
でないと、大変なことが起こる。
彼らの主食は人間の生き血。
むやみやたらに吸血鬼を増やすのは、ライバルを増やすことになりかねない。
生態系ピラミッドよろしく、人の生き血を吸う吸血鬼はその頂上に君臨する。彼らの数が増えるには、それを支えるピラミッドの底辺は必然的に大きくならざるをえない。ところが現実はそうではない。受け入れられる器は決まっている。昨今、人類の数は爆発的に増えつつあるが、だからといって安心して仲間を増やすようなことはしない。食料の常なる安定供給に向け、奪い合うようなことがないよう吸血鬼は不用意な仲間を増やすことを避けているのだ。
依頼人の神等薔介氏はスーツの似合う30代のおじさんだった。さすが同じ神等家の者。美しい黒髪をオールバックにして、できるサラリーマン風のちょっとしたイケオジだった。けど、なんだか仕事に……いや人生に疲れた感じもした。
「私、いわゆる社畜でして……」
と言われて納得した。
日夜サラリーマンを頑張っていると、こうなるんだろう……と思う。
俺は将来絶対にサラリーマンにならないので、よくは分からないが。
とにかく、その薔介氏が彼女の存在に気付いた。彼女が永遠の生を長らえ、それと同時に殺戮を繰り返すのが家族として辛いのだと。これ以上彼女に罪を犯して欲しくない。その一心で俺に頼みに来たのだと。
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