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 リビングで話をと行きたいところだったけど、辰也は入り口で立ち止まったままだった。 「何?」 「いや、かなり片付いてるなと思って。引っ越し?」  驚いていた。 「しないよ。自棄になって片付けただけ」 「自棄?」 「仕事辞めたの」自棄と一新したい気分の半々で部屋の大掃除をしたと話す。「で、ボールペンを見つけた」 「なるほど」 「上がって」 「…なんか積極的」 「そうしてないと次に行けないから。半分は強がり」  言いながら移動し、リビングテーブルに置いていたボールペンを渡した。 「はい」 「サンキュー。見つかって良かった」 「…本当にそう思ってる?」 「半分ぐらいは」  軽い言い方に呆れて返すと、何一つ変わらない反応が返ってきた。 「それで、何で仕事辞めたの?」 「…駄目になってきたところに退職者募集がきたから。次はまだ何も決まってない」  答えながらソファに座った。辰也がその隣に来る。 「何が向いてると思う?」 「堅実な仕事…事務職とかの裏方? うちでちょうど募集してるけど」 「それはちょっと…」  気まずい。 「何? 変な顔して」 「失礼なこと言わないで」真面目に返した。「紹介はいいよ。ただ…」 「ただ?」 「ここに戻る気、ない?」  濁したままでは後悔してしまいそうなので、思い切って訊いた。 「え?」 「やっぱり、いまのなしで。思い付きで言っただけだから」  甘えるのは駄目だと撤回したけど、辰也は聞かなかった。「いまいるところボロいし」と言い出した。 「あり」 「本当に?」 「うん。引っ越し手続き面倒だけど、家賃半分になるし」  片付いているから物が増えても大丈夫だろうし、とメリットを挙げだした。 「悪いこと全然ない」 「…だね」
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