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接点ーせってんー
「うそっ! ここどこ!?」
明らかに別の場所だ。用具室の扉を、もう一度開いただけなのに。
「おまえの親が来た警察署。帰る途中で引っ張られちまった。な? 幽霊でも、誘拐犯でもないだろ?」
「別の意味で怖いよ。でもすごい! 僕は和泉浅緋。小学三年生だけど、君は?」
「増田雄黄。同い年だな。めちゃくちゃ急いでるから行くぞ」
ロビーに出る。
「どこ? いないんだけど」
「え? あそこに座ってる二人、違うのか?」
「違うよ。僕のお父さんとお母さんじゃない」
「おかしいな。関係あるやつのところにしか繋がらないはずだ」
「それ根拠あるの?」
「間違いないと思う。一度あの女の人の声でここに来た。だからあの人の息子のとこへ行こうって思ったんだ。そうしたらおまえがいた」
不意にズボンをたたかれ、浅緋がそちらを向く。
小さな男の子が彼を見上げながら、しきりにあの夫婦を指差していた。
「あ、もしかして君のパパとママ? 良かったぁ! 雄黄、この子のご両親だよ」
「理由を聞け」
「え?」
「その子がなんで父さん母さんのところに行かないのか、今どこで何をしてんのかってのを聞いてみろ、早く‼」
「よくわかんないんだけど」
「俺もわかんない。おまえが誰と話してんのか」
「‥‥‥」
「おまえ今、一人芝居してるようにしか見えない」
「うそ‥‥‥」
「急げよ! 生霊かもしれないだろ」
「マニアックな言葉知ってるんだね」
浅緋は深呼吸をすると、その子に向き直った。
「パパとママ、何度も呼んでるのに返事してくれないんだって。
さっきまで公園にいて、寒くて、足が痛くて動けないって。だから、だから今、公園の滑り台の中にいるんだって雄黄これって」
「すいません! 公園で滑り台の中に入っていく男の子を誰かが見たらしいです」
雄黄は既に夫婦のところにいた。
「本当!? じゃあOO公園だわ‼」
夫婦と共に、警官達がバタバタと出ていく。男の子が消えた。
祈るように両手を合わせている雄黄を見ながら、浅緋はへなへなと座り込む。
「あの後いろいろ聞かれたらどうする気だったんだよ」
「見えるのか? そういうの、しょっちゅう見てるのか?」
「実を言うとね。小っちゃい時からなんで多少は慣れてるけど、今日みたいにハッキリなのは久々。でもいいやつだね、君。見ず知らずの人をあんなに心配してあげれるなんて」
「俺の母さん‥‥‥たぶん昨日死んだから。ごめんな。変だと思うかもしれないけど、黙ってる方がしんどいんだ。だから、あの女の人が泣くのがすっげぇ嫌だった」
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