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「今たぶんって言った? じゃあ生きてる可能性もあるってこと?」
「すごい血で、頭の形、変になってて何回揺すっても」
「待って待って待って」
つい耳をふさぎながら、浅緋は気持ちを整理した。
俗説だが、葬式は大切な人を亡くした家族が、少しの間でも悲しい気持ちを忘れられるように忙しく行うものだと聞いたことがある。
自分と同じ年令。世間で言うところのまだ小さな子供である雄黄が、それと似たような状況に置かれて混乱し、とにかく動き回りたいのだろうと思った。
「君、その瞬間移動みたいなやつ、いつからできるようになったの?」
「それも昨日。深雪っていう女の子にもらった」
「なに? その子魔女か何か?」
「かもな。魔法もばあちゃんにもらったって言ってたし」
「じゃあその子に頼めないのかな、お母さんのこと」
「無理。あいつのばあちゃんは生き返らなかった」
「ケースバイケースってのもある。その子、今どこにいるの?」
「昭和」
「待って待って待って」
「それ口癖か?」
「じゃなくて! 方法あるじゃない‼」
「死ぬ前に戻れってんだろ? それくらい俺も考えた。でも過去は変えられないって言うじゃん。もうあんなところ見たくない」
「君らしくない気がする。一回やってみればいいじゃない。せっかくこんな力もらったんだから、ほんとは変わるかもって思ってるでしょ?」
「‥‥‥」
「行ってみなよ。とりあえず。後のことはそれから考えればいい。一番やりたいことやっといた方が、後悔が無いし」
「‥‥‥かな」
「連絡先教えて。結果聞きたい」
「携帯、家なんだ。あ、番号は言えるな」
「ああ~僕も忘れたんだっけ。ごめん覚えてないや。
あの、ちなみに悪いんだけどもう一度送ってもらえる?僕ん家まで。
そうしたら番号交換できる」
「タクシーかよ」
「いいねそれ。ユーオータクシー」
こんな訳のわからない、ひどい状況で二人は笑った。
自分を助けてくれる友達がこの世界に二人もいた。
自分は幸せなのかもしれないと、雄黄は思った。
「またね」
家の前で浅緋が手を差し出す。
「ごめんな。手、ちょっとまずいんだ」
浅緋は何か気づいたらしく、代わりにポンッと雄黄の肩をたたいて言った。
「そこの物置の扉、使える?」
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