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少し会っただけの、知り合いでもない男の子のことを、浅緋がこんなに語れるわけがなかった。
「かわいそうにこの子、僕の傍から離れないんだよ」
「おまえ今どこにいる?」
「この子の家の前」
雄黄の背筋が冷たくなる。
「どうしてだか、君の力、コピーできちゃったんだ。もしかしたらもともと僕にもそういう力があってさ。それが覚醒したのかも」
違う。そんな胸躍るような話じゃない。雄黄は部屋の扉を見つめた。
「それで僕考えたんだ‥‥‥お父さんがいなくなれば、おばあちゃんも子供を亡くした人の気持ち、わかるんじゃない?‥‥‥」
「浅緋」
「ママの気持ちもわかるんじゃないかって‥‥‥」
「浅緋」
雄黄はごくりと唾を飲み、携帯に顔を近づけた。
「わかった。俺も手伝う」
「‥‥‥意外だな、絶対止めると思ったのに‥‥‥」
「俺の親父もとんでもない奴だった。母さんが死んだのもあいつのせいだった。だから他人事じゃない。すぐに行くから、そこにいろよ?」
「わかった。待ってる」
携帯が切れる。雄黄は思いきり息を吸い、唱えた。
(男の子の家に行く)
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