接点ーせってんー

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(キミノチカラ、コピーデキタヨ) (俺バカだっ!) 触った!  あの時俺、あいつに触った! 浅緋(あさひ)に初めて会った時、俺あいつの腕つかんだじゃん! あの状況でのわずかな痛みなど、浅緋は気にも留めなかったに違いない。 バランスを崩して尻もちをつく。 俺、今も深雪(みゆき)の魔法を使えてる。 ってことは‥‥‥ 「お家でご飯食べてたんだけどぉ」 懐かしい声がした。 「深雪!」 愛らしい少女が、ご飯粒を頬につけたまま不満そうに立っている。 「お兄ちゃんが急に呼んだからトイレ行くって言ってきた。どうしたの? 急いで帰んないと怪しまれちゃう」 そうなんだよな。 雄黄(ゆうおう)は苦笑する。 小っちゃい子って目の前のことが一番重要だもんな。 この前は俺と『コンジョウノワカレ』みたいな顔してたのに。 「ごめんな。深雪が助けてくれたらすぐに終わる」 ご飯粒をとってやりながら、雄黄は浅緋を指差した。 「あそこにいる奴を止めてくれ。見えるか? あいつ火事起こそうとしてる」 「うそっ! あの眼鏡のお兄ちゃんね?」 「あいつの中にいる奴だ。わかるだろ? 俺じゃあっちに入れないんだ」 「わかった」 深雪は難なく壁をすり抜け、浅緋をぽんぽんとたたいた。 「ちょっと! なにしてるの?」 「じゃましないでよ」 突然現れた女の子に戸惑いながらも、浅緋はライターと格闘している。 「つかないの?」 かちりと音がした。いきなり点いた火にあわて、浅緋はライターを落とす。 地面に着く前に、ライターは再びかちりと閉まった。 「ね! あついでしょ!? これがおっきな火だったらもっと熱くて大変なことになるのよ!」 「僕は熱くない! 熱いのはこのお兄さんだけだ!」 深雪はピシャリと浅緋の手をたたいた。 「悪い子ね! どうして自分のことしか考えないの‼」 こんな時なのに、お姉さんぶった深雪が微笑ましい。 気持ちは戻った。無いなら作る! 雄黄は深雪達のいる(あた)りに視線を集中させた。 「でもよかったわ。お手々さわってわかったもの。あなたママに会いたいんでしょう? 会えれば止めるわよね?」 「うるさいっ‼ 嘘つくなできないこと言うなっ‼ できないことを言うなぁぁぁぁーーーーーっ!」 子供とは思えない野太い声で浅緋が叫ぶ。独りでにライターのスイッチが入り始めた。 (限界だ!) 雄黄は父に体当たりした時のことを思い出した。 見えない壁に突進する。 「深雪! ライター持っててくれ!」 ライターが跳ね上がり、閉じて深雪の手に(おさ)まる。 雄黄は二人を抱え、一気にガレージに飛び込んだ。
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