接点ーせってんー

7/8
前へ
/30ページ
次へ
「で、なんでここなの?」 「いや、おまえも急いでたし、あの場所から一番遠いところって思ったら」 三人は(正確には四人は)今、深雪(みゆき)の家の玄関にいた。 ご丁寧にも、深雪の父親のお迎え付きで。 「深雪‼ どこへ行っていたんだ、びっくりするだろう。ん? 君はあの時の! すまない。また娘を送ってきてくれたんだね?」 「いえ、えと」 「良かったらご飯食べていくかい? あ、お友達かな、君も一緒におやすみぃ」 ばたん。いきなり倒れていびきをかき始めた父親に、深雪がテキパキと靴を脱いで家に上がり、枕と布団を運んできた。 「これで朝まで起きないから」 「深雪、母さんは?」 「まだ入院してる。いっしゅうかんって何日?」 「『なのか』、うんと、『しちにち』だな」 「あと『ごにち』もあるのかぁ」 浅緋が、と言うより彼の中にいる男の子が、深雪と雄黄(ゆうおう)のやり取りを不思議そうに眺めている。 「深雪、悪いけど連絡ノートまた持ってきてくれるか?」 深雪がとことことリビングに入る。通園バッグを受け取ると、雄黄は浅緋にノートの最後のページをめくってみせた。 「な? ここ『しょうわ』って書いてあるだろ? 俺達がいるの『へいせい』だろ? だから俺達、嘘は言ってない。おまえのこと、怪我する前の時間に連れて行ってやる」 「ほんとに‥‥‥?」 「ああ。おまえの母さんが迎えに来るまで、俺達も一緒に公園にいてやる。 だから頼む。浅緋から出て、こいつに、浅緋にその場所を教えてやってくれよ」 「ほんとにママのところに帰れる?」 浅緋の前に、深雪が小指を差し出した。 「指切りげんまん! うそついたら、お兄ちゃんが針千本飲むからね!」 「え?」 雄黄が首をひねった時、浅緋が深雪と指を絡めたまま言った。 「えと‥‥‥誰? ここどこ?」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加