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「で、なんでここなの?」
「いや、おまえも急いでたし、あの場所から一番遠いところって思ったら」
三人は(正確には四人は)今、深雪の家の玄関にいた。
ご丁寧にも、深雪の父親のお迎え付きで。
「深雪‼ どこへ行っていたんだ、びっくりするだろう。ん? 君はあの時の!
すまない。また娘を送ってきてくれたんだね?」
「いえ、えと」
「良かったらご飯食べていくかい? あ、お友達かな、君も一緒におやすみぃ」
ばたん。いきなり倒れていびきをかき始めた父親に、深雪がテキパキと靴を脱いで家に上がり、枕と布団を運んできた。
「これで朝まで起きないから」
「深雪、母さんは?」
「まだ入院してる。いっしゅうかんって何日?」
「『なのか』、うんと、『しちにち』だな」
「あと『ごにち』もあるのかぁ」
浅緋が、と言うより彼の中にいる男の子が、深雪と雄黄のやり取りを不思議そうに眺めている。
「深雪、悪いけど連絡ノートまた持ってきてくれるか?」
深雪がとことことリビングに入る。通園バッグを受け取ると、雄黄は浅緋にノートの最後のページをめくってみせた。
「な? ここ『しょうわ』って書いてあるだろ? 俺達がいるの『へいせい』だろ? だから俺達、嘘は言ってない。おまえのこと、怪我する前の時間に連れて行ってやる」
「ほんとに‥‥‥?」
「ああ。おまえの母さんが迎えに来るまで、俺達も一緒に公園にいてやる。
だから頼む。浅緋から出て、こいつに、浅緋にその場所を教えてやってくれよ」
「ほんとにママのところに帰れる?」
浅緋の前に、深雪が小指を差し出した。
「指切りげんまん! うそついたら、お兄ちゃんが針千本飲むからね!」
「え?」
雄黄が首をひねった時、浅緋が深雪と指を絡めたまま言った。
「えと‥‥‥誰? ここどこ?」
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