晦冥ーかいめいー

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晦冥ーかいめいー

 (停電?) しかも、夜? 民子は愕然とする。 警察署(ここ)に来たのはいったい何時頃だった? あたし、そんなに長いことあの人のこと見てたのかしら‥‥‥。 街灯一本点いていない。 近くにあるはずの商店街の気配すら、感じられないなんてことがあるものだろうか。それよりも、買い物に来た人達がもう少し騒いでもいいはずだ。 誰の声も聞こえない。誰もいない? 人の気配もしないのだ。 気持ち悪い! 民子はあわてて引き返そうとした。 ‥‥‥無い。 今出て来たばかりの、真後ろに在った警察の建物が、無い。 否、署内も停電したのだろう。少なくともあの中には人がいる。 こんなところに一人でいるよりは。 民子は見当をつけて踏み出した。 「ぎゃああっ!」 どこかに、落ちた。 用心深く立ち上がってみる。どこも折れていない。 安堵と共に、すぐに不安が襲ってきた。 「すいませーんっ! 誰かいるーっ? すいませーん‼」 上を向いて何度も叫んだが、返事は無い。 汗が背中を伝わった。 (携帯、点くわ!) 家族の番号を押す。 「オカケ二ナッタ電話バンゴウハ」 110を押した。最初からこうすれば良かったと思った。 「電話バンゴウハ、デンパノトドカナイ」 「ちょっと嘘でしょっ!?」 何度かけても同じだった。 電池が無くなれば何もできなくなる。しばらく携帯を止めるしかない。 どうしてこんな目に。 ゾッとして振り返った。 何もいない。何もいない。 大丈夫、もうすぐ誰かが通るはず。 警察には、あれだけの人がいたのだから。
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