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「ねぇ、ジュース飲みたい」
「考えてみればさ、一番いい結果なら、女の人は今日ここに来ないんじゃないかな‥‥‥」
浅緋の言うことはもっともだ。だが‥‥‥。
雄黄は決心がつかなかった。
本当に来なければそれでいい。だがもし来てしまったら。
子供三人があまり長居をしていると、心配した警察官が理由を聞きに来てしまうかもしれない。
窓口から一番離れて座ってはいるが、雄黄と浅緋は取るべき行動で悩んでいた。
退屈した深雪が、ソファの後ろを行ったり来たりしている。
「ねぇってば! ジュース買ってきていい?」
「深雪ちゃん声大きい」
「冷えるぞ、紅茶とかの方が良くないか?」
「大丈夫」
深雪が浅緋から小銭を受け取る。
「お兄ちゃん達は?」
「やっぱ俺らも行くか」
このまま会話を続けると目立ってしまいそうだ。二人は立ち上がる。
「雄黄‼」
浅緋が鋭くささやいた。
あの女の人が、足早に窓口に向かって歩いてきている。
一人で。
雄黄は心臓をつかまれたような気がした。
「浅緋、男の子は?」
「いない。来てない。だからあの子に何かあったわけじゃないってことだよ」
ではなぜ?
女の人は笑っていない。
楽しい人は、警察には来ない。
窓口の奥から一人の男の人が現れた。
女の人の表情が柔らかくなった。
「深雪が見てきてあげる」
「え、ちょっ」
あわてる兄達(?)を残し、深雪はとことこと窓口に歩いて行った。
小さな女の子が傍に来たのを見て、女の人はにっこりと笑う。
深雪も思いきり愛らしい笑顔を向けると二言三言話し、
さりげなく遠回りしてから固まっている二人のところへ戻って来た。
「忘れものが届いてたんだって」
雄黄と浅緋がどさりと座る。
「れんらくちょうって言ってたよ。子供のだって。でね、あの男の人パパ」
「なに?」
雄黄と浅緋がハモる。
「だからぁ、あの人あの男の子のパパ。でもよかった。今度はすっごく優しそうな人だから安心だね」
「深雪ちゃんグッジョブ!」
「ちょっと待て」
雄黄が女の人の叫びに引き寄せられた結果、自分と浅緋は確かにあの子の父親を見た。
だから男の子の父親が変わったことがわかるのは二人だけのはずだ。
「深雪ちゃん、今、今度のパパって言った?」
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