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変わった。
あの出来事のあった場所、あの出来事の中に存在た人々の、
繋がり‥‥‥。
ただ良い方向へ変えようと思った。
それだけで、こんなに変わってしまうものなのか。
「帰ろう」
深雪を真ん中に、三人は再び手を繋ぐ。
「深雪、絶対に手、離すなよ」
「ちゃんと繋いでてね」
「そんなに子供じゃないんだけど」
深雪は口をとがらせた。
雄黄がもの心つく前からあった公園の、
大きな滑り台の中に、三人はいた。
「深雪、今から言うことよく聞けよ」
「なぁに?」
改まった二人の顔を見て、深雪は少し構えている。
「俺達な、おまえに魔法を返そうと思う」
「なんで!?」
「おまえ、俺を追っかけて失敗したって言ってたろ?
今回はちゃんと会えた。けど、もしも次失敗したら‥‥‥
どこにも帰れなくなるかもしれないんだぞ」
「大丈夫だもん!」
「大丈夫じゃない。もし何かあったら、おまえの父さん母さん泣いちゃうぞ。あの男の子の母さん見ただろ?」
深雪はハッとする。あの優しそうな女の人の、あんなに悲しそうな顔。
「深雪ちゃんに何かあったら、僕達はすごく悲しいんだよ」
浅緋が優しく言った。
雄黄達が恐れているのはそれだけではない。
魔法を持ち続けていたら、またきっといつかは使ってしまう。
そうすれば今日のように、何かのはずみで、大切な誰かの家が無くなってしまうかもしれない。それが三人のうちの誰かだったら‥‥‥二度と会えなくなるかもしれないのだ。
「もう失敗しないもん! やだっ」
「深雪‥‥‥」
「いつでも来てくれるって言ったじゃん!」
「深雪」
「じゃあ呼んでいい? 深雪がいっぱい呼んでもいい? そうしたらいつでも来てくれる?」
だめだ。と二人は思う。こんな小さな子が頻繁に魔法を使ったら、きっと
深雪にとって良くないことになる。
「深雪ちゃん、大丈夫だよ。魔法、使わなくても必ず会えるから。
深雪ちゃんのいるところと僕らのいるところは、お隣同士なんだから」
「うそっ! お兄ちゃん達のお家、深雪の近くに無いじゃない‼」
「あのな、深雪が少しだけ大きくなったら、俺達は絶対に会えるんだ」
二人は一生懸命深雪をなだめる。
「それいつ?」
「うん‥‥‥とな、毎日勉強して、宿題もちゃんとして‥‥‥」
今の深雪に正直な数字は言えない。
「それに、大きくなってオシャレもいろいろ覚えれば完っ璧! 深雪ちゃん今のまんまでもイタッ!」
パシッ‼ と両手で深雪が浅緋の口元を押さえ、雄黄を見た。
浅緋も察し、雄黄を見る。君が言ってあげなきゃね。
だが肝心の雄黄は、何のことだかわからない。
「深雪、お勉強も宿題もおしゃれもいっぱいする! だから雄黄お兄ちゃん、
次に会ったら‥‥‥」
今度は深雪が口をつぐんでしまい、雄黄はますますわからない。
「おしゃれなんか別にいいよ。深雪そのまんまでも可愛いと思うし」
深雪が顔を両手でかくし、浅緋は静かにグッジョブを拳に込めた。
「あっと言う間、本当にあっと言う間だ。そうしたら必ず『ねんごう』って言うのが変わる。そうしたらもっとすぐだ」
雄黄は深雪からノートを受け取る。
「浅緋と一緒に名前書いとくからな。フリガナもふっといてやる。
いっぱい我慢して、本当に困って、どうしても我慢できなくなったら、来い」
雄黄は浅緋からハンカチを借りると、深雪の涙を拭いてやった。
「いいか? 絶対に会えるからな? 『しょうわ』と『へいせい』は繋がってるんだから、むやみに魔法使うんじゃないぞ」
涙でぐしょぐしょの深雪の前に、雄黄と浅緋は小指を差し出す。
「指切りげんまん! うそついたらお兄ちゃん達に針千本飲-ますっ!」
「痛ッ‼」
雄黄と浅緋が手をさする。滑り台の中が光る。
魔法と一緒に、深雪が昭和に戻った。
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