再会ーさいかいー

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 「! ‥‥‥ん!?」 「深雪(みゆき)、ちゃんのはずないよね‥‥‥」 身体の大きくなった三人は、さすがにもう滑り台の中には入れない。 (そんな三人いたら怪しいよね) (だったらそこの傍に、早く着いた方が立っていればいいか) そう言ってみんなで笑った。 今その場所に、間違いなく立っている女性がいる。 が、彼女は自分達よりせいぜい七、八年早く生まれたようにしか見えなかった。 偶然居合わせた他人にしては、その面立ちはあまりにも深雪を思わせるもので。まさか‥‥‥ 「わかんないよ! ‥‥‥そうと決まったわけじゃないよ」 察しが良すぎる浅緋(あさひ)が、顔色を変えて下を向く。 二人に気付いた女性は、真っ直ぐこちらに向かって歩いてきた。 「あなたは、眼鏡をかけているから浅緋君。君が雄黄(ゆうおう)君ね? 初めまして。私、宮崎苺花(みやざきまいか)と言います」 言いながらすっと手を差し出す。 雄黄と浅緋は顔を見合わせ、戸惑いながら、雄黄が握手に(こた)える。 「ってーーーーッ‼」 「ゆ、雄黄ッ!?」 あわてる二人に、苺花は声を出して笑った。 「やっぱりね! お母さんが言っていた通り、君が先だったか」 「お、お母さん‥‥‥」 雄黄がかすれた声を出す。 「じゃあ、やっぱり君、いえ、先輩は」 浅緋がたずねる。 「あら礼儀正しい。生徒会とか入ってる人?」 「めっそうもない、じゃなくて」 「そう。私、旧姓相原深雪(あいはらみゆき)の娘です」 「そうじゃなくて」 「深雪っ! なぁ深雪は!?」 雄黄が割って入る。ここに娘が来たと言うことは、深雪はもう‥‥‥ 苺花は静かに笑った。 「ほら、いい加減決心ついたでしょう?」 苺花が滑り台の後ろを振り返る。     「ね? あの時やっぱり私がいて良かったでしょう?」 今でも苺花は得意げに言う。あの後は大騒ぎだった。 滑り台の後ろから、自分達の母親より少し年上くらいの、品の良い女性が 覚悟を決めて出てきた時、 「ばかやろう~っ! ‥‥‥俺、てっきり」 雄黄はすかさず抱きしめてしまっていた。 「良かったぁ本当に良かったよぉぉ」 後から飛び込んできた浅緋と共にわんわん泣いて、周りのお年寄りや親子連れに何事かと注目され、散歩に来た犬も吠えまくった。 「私がいなかったら、けっこうまずかったよね? あれ」 思い出してまた笑う。 苺花は暇を見つけては、けっこうな頻度で二人に会いにやって来た。 お土産と一緒に、今はもう大きくなった深雪(みゆき)の、優しい伝言(ことば)(たずさ)えて。   八年目のあの日の後、深雪は本当に一度も会いに来なかった。 雄黄達の方から行くと言ってもやんわりと(ことわ)り、全てを苺花に任せた。 素晴らしい思い出は、あの日一日で充分にできたからと。
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