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「任命します。今年のサンタさんはあなたです」
帆南にそう言われたとき、静彦はぼうっとテレビを見ながらソファの上で歯磨きをしていたところで、言われた言葉の内容というよりも突然目の前に帆南の顔が現われたことにびっくりして歯磨き粉を少し飲み込んでしまった。そのせいで咳き込む。
「今年のサンタさんはあなたですよ」
もう一度囁くように言った帆南が顔をどかした先には、小学三年生の帆南の息子、晴がいた。晴は、下を向き熱心にお絵かきをしているところだった。男の子にしては長めな前髪が垂れていて、横顔だけだと女の子のようにも見える。晴の向こう側には小さなクリスマスツリーが飾ってあって、そのてっぺんでは金色の星がキラキラと輝いていた。金色の星と晴を見つめながら、静彦はそうか、もうすぐクリスマスか、と口の中でもごもごと呟いた。
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