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日曜日のイオンショッピングセンターは混んでいた。老若男女で溢れかえっているが、どちらかというと小さな子供と一緒の若い親子連れが多い。12月なので、館内には楽しげなクリスマスソングが鳴り響き、至る所に赤と緑が多めなクリスマスの装飾が施されていた。
静彦の隣を歩く帆南と晴の表情も心なしかいつもよりも輝いて見える。
何がクリスマスだよなぁ、と静彦は思う。静彦はクリスマスにいい思い出がなかった。一番印象に残っているのは小学4年生のときのクリスマスプレゼントだ。目を覚ますと枕元にクリスマス用の赤い包装紙に包まれた野球のボールとキャッチャーミットが置かれていた。サンタには最新のゲーム機とゲームソフトをお願いしていたというのに。赤い包装紙を破くときのワクワクするような高揚感と中身が明らかになったときの何とも言えない怒りの感情を今でも思い出すことができる。目の前では熱狂的な中日ファンの父親が歯を剥き出しにして笑っていた。サンタの正体に気付いた瞬間だった。
それ以降もクリスマスにはろくな思い出がない。両親が大げんかをして父親が家を出て行ったのもクリスマスイブの夜だった。テーブルに並んだ両親の分のローストチキンも食べようとしてお腹を壊し、以来ローストチキン恐怖症になってしまった。父親はそれきり家には戻ってこず、両親はいつのまにか離婚していた。静彦自身も学生時代クリスマスイブに約束していたデートをすっぽかされたり、数年前は買ったばかりの車に乗っていたとき突然飛び出してきた車に衝突されたり、とにかくいい思い出がないのだった。
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