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それすらも今この電話で男の思惑通りとなってしまったが。
最近の俺は、翔琉と一緒にいることで贅沢を覚えてしまっている。
恋人だからと割り切れる性格だったら良いのだが、まだそこは難しい。
とりあえずそれでも、明日は誰よりも最初に翔琉へ晴れ姿を見て貰いたい気持ちはある。
否、一番に見せたいのだ。
大切な人である、大好きな翔琉に。
『あぁ、そのことか。何度も言うが気にするな。むしろ、そろそろ俺の好意に慣れろ』
「ムチャ言わないでくださいよ。あなたからの好意はお金がかかりすぎて、その全貌を知るのが怖いから慣れたくないです」
どれも全て本音だったが、わざと俺は軽口を叩くように言った。思いつめず返せるほどには、龍ヶ崎翔琉という人物に慣れてきたように思う。
「――でも、翔琉のこと……好き、だから。その好意、今回だけは“特別”にしかと受け止めます。おやすみなさい」
これも本音だ。
恥ずかしくなった俺は、強制的に電話を終了させようとする。
電話の向こうで翔琉が静かに笑った。
『ああ、おやすみ。俺も颯斗が好きだ』
翔琉はそれ以上余計なことは何も言わず、電話を切った。
「俺も颯斗が好きだ」の余韻が、俺の耳へ遺る。
参ったなと思う。
明日が待ち遠しい。
成人式とか関係なく、翔琉に逢える明日が来るのが待ち遠しいなんて。
ドキドキしながらその晩、俺はなんとか眠りに着いたのであった。
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