一年の計は初夢にあり♡

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「あー! ダメ、ですっ!!」 慌てて俺は、自身の携帯電話を奪おうと手を伸ばす。 「ダメって、却ってどんな小説を読んでいるのか気になるな。もしかしてエロい小説だったりするのか? 否、実際に読んでいたら絶対に許さないし、俺はそんなに欲求不満にさせているつもりもないのだが」 ご最もだと思った。 確かに、翔琉は俺を欲求不満にはさせない絶倫ヤローだ。 むしろ、いつも俺の方が先に音を上げ、我慢させてしまうこともある。 意地悪そうに告げた翔琉は、その画面を見るなり無表情となった。 ああ! ちょうど感動のシーンの後、煌輝の実家で二人が久しぶりにイチャイチャしているシーンなのに! それでも心の中で俺は絶叫していると、翔琉は視線だけで尋ねた。 「何だこれは?」と。 よりによって、糖度高めのシーンを目撃されてしまった。 サイアクだ。 完全にこれで俺は欲求不満だと思われたに違いない。 間違いなくこの後、俺たちはそう(、、)いう(、、)展開になってしまうだろう。 今夜はこのまま、この余韻に浸って良い初夢を見たいというのに。 「こ、これっ。今、流行りのオメガバースっていうヤツです! 設定が濃くて!」 がっくり項垂れながらも、俺は全力でその携帯電話を奪い返す。 「おめがばーす?」 不思議な呪文を唱えたように翔琉はオウム返しした。 「そうです! 優秀な遺伝子を持つαと、平凡なβと、男女共にαの子どもを産むことができるΩが出て来る世界のお話しです!」 当たり障りない設定を伝えると、続けて俺はこう言った。 「このお話しに出てくるαを読んでいると、現実の世界だったらきっと翔琉のことかな、なんて思うんです」 「……優秀な遺伝子を持つ、か。実際に優秀かどうかは分からないが、颯斗にそう思って貰えているならば光栄だな。だったら颯斗は、俺の子どもを産んでくれるΩか?」 軽く説明しただけで、すぐ様その設定を記憶してしまう翔琉は、やはり間違いなく優秀な遺伝子を持つ男なのだと俺は思った。 「いえ。俺はどこにでもいる平凡な人間なので、多分βです」 当然の如くそう返した俺に、翔琉は眉をひそめる。 「――は? 何で、颯斗がβなんだ。俺がαだったら、その子どもを産むのはどう考えても颯斗しかいないだろう?」 「いや、でも……Ωって大概可愛いくて小柄な子が多いんですよ。この話しに出てくる瑠輝君も、華奢で美人なイメージというか……」 真面目に俺が答えていると、翔琉はあからさまにムッとした表情を見せた。 「じゃあ、何だ。颯斗は俺に浮気してもいいというのか?」 鬼気迫る勢いで、翔琉は俺に問う。 「いや、それは違くて……というか、そもそもこれは設定であって」 しどろもどろになりながら答える俺に真剣に詰め寄る翔琉は、もうすっかり“高遠颯斗”への強い独占欲しかそこにはない。 大き過ぎる愛が嬉しくて。 戸惑いつつも、俺はこの誤解をどう解こうか、独り考えてしまう。
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