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すん、と翔琉は俺の首筋へ顔を埋めるように鼻を近付ける。
「いい香りだ」
ぞくりとするほど甘美な低い声が、布地の奥に隠された俺の熱を射抜く。
翔琉の声だけで、もどかしくなる。
否、違う。
翔琉の嗅ぎなれたそのムスクの香りと混じり合った体臭。
宝石のような透き通った奇跡の彩りと輝きを放つグレーの瞳。
その全てが合わさって形成された“龍ヶ崎翔琉”という存在が、俺の全身を。
俺――自身を酷く滾らせるのだ。
「颯斗の発情の香りが、俺を狂わせる」
真剣な眼差しで告げる翔琉の熱雄は、扇情的な芳香を放つ。
鈴口から出てくる涙蜜がトロトロとその先端を淫猥に濡らし、俺の熱雄は痛いほど布地の中でゆらり蠢いた。
狂わされているのは俺の方だ。
Ωでも何でもないのに。
翔琉の強いフェロモンに――発情してしまう。
「俺も、翔琉の香りに狂わされています」
ねだるように、自ら俺は翔琉の首へ手を回し足を大きく開脚させた。
「……積極的な颯斗はめずらしいな」
嬉々として翔琉は口許を綻ばせる。
「発情期、だから……かもしれません」
羞恥心を残したまま、それでも俺は眼前の翔琉をじっとダークブラウンの瞳で見据えた。
「――ということは、やはり颯斗はΩだったんだな」
クスリと笑むと、手際よくルームウェアのパンツの下をおろしていく。
合わせがない分、既に痛いほど勃ち上がっていた俺の熱雄は、水を得た魚のように勢いよく外気へふるんと飛び出す。
「ちょ、ちょっと翔琉! いきなりは恥ずかしいです……」
首まで真っ赤にした俺は、顔を背けながら言う。
「いきなりはダメということは、たとえば――これから颯斗の勃ち上がったモノを口に含みます、などと宣言する必要があるということか?」
翔琉はそう告げると宣言通り、何の躊躇いもなく湿度高い灼熱の俺の雄へ顔を埋めると、口に含んだ。
はずかしい。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
じゅぷじゅぷと翔琉の口腔内で俺の熱雄が深く咥え込まれ、行き来する卑猥な音が鼓膜を揺らす。
「あっ……ぁああ」
目の前で獰猛な雄が俺に喰らいつく姿。特有の涙蜜の匂い。戯れの水音。
次第に、俺の理性は飛んでいく。
全てこれは、発情期のせいだ。
発情期のせいにしよう。
女を知らない俺は、今宵も翔琉からもたらされる快感で深く溺れていく。
Ωでも、βでもない、俺が存在するのは普通の世界だというのに。
「――翔琉の遺伝子、俺の内へいっぱい注いで下さい」
気が付けば俺は腰を振り、はしたなくねだっていた。
「……ねえ?」
後で絶対に後悔すると分かっていながら、だ。
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