Congratulations!!

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「分かった。楽しみにしてる」 つられて俺も笑い、明日会うことを約束し電話を切った。 時刻はあっという間に十時をまわっており、今度こそもう風呂へ入って寝てしまおう。そう思ったところで、また携帯電話が鳴る。 ディスプレイに表示された名前から慌てて俺は受話器マークをタップし、だが高揚している気持ちをなるべく抑え電話に出た。 「……翔琉?」 『今夜は自宅へ帰ったのか?』 「あ、はい」 『明日は早いのだから、俺の家に泊まって行けと言ったのに。俺が明日、会場まで送るから』 翔琉の背後もまた賑やかで、まだ撮影現場にいるのだろうと察する。 「でも、今夜は遅くまで撮影でしょう? ムリしないでください。ただでさえ、あなたからは袴を頂いて頭が上がらないのに」 『気にするな。恋人の成人のお祝いを、ただ俺がしたいだけだ。だったら明日朝、そちらへ迎えに行ってもいいが』 突然の申し出に、俺は全力で否定した。 「あの、本当に大丈夫ですから! ゆっくり休んでください! ホントに!」 恋人、と言ってくれた翔琉のその一言に胸を高鳴らせながらも口では遠慮してみせる。 『気にするな。タクシー代わりと思って俺を頼るがいい』 タクシー代わりって。 呆れた俺は肩を竦めながら口を開く。 「一般庶民は、都内の一等地から郊外までの超距離間にタクシーなんか使いませんよ」 『なに? では、恋人からの好意が颯斗は受け取れないのか?』 「そういう意味ではないです。嬉しいですけど、疲れた翔琉に朝から迎えに来てもらうのは申し訳ないので」 毅然とした態度で告げると、翔琉はこう提案した。 『では、颯斗の家へ前乗りするとしようか?』 「え?! 前乗り?」 声が思わず大きく裏返る。 『そうだ。今日の仕事は午前様にはならず終わるはずだから、そっちにはそこまで遅くならない時間に行けるだろう』 図々しく申し出た翔琉に、俺は激しく抵抗した。 「いや、ちょっと! それって俺の家へ泊まるってことですか?」 『そうなるな。前乗りだから』 むり。 ムリ。 無理、でしょう? 今から実家に翔琉が泊まるなんて。 色々な意味で。
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