Congratulations!!

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「それより……今回のことは本当にありがとうございました」 改めて和装のお礼を伝える。 俺のために手配してくれた時ももちろんお礼は言ったが、やはり前日であるこのタイミングでも伝えておきたかった。 『今回のこと?』 何のことだか分からないとばかりに、翔琉は不思議そうな口調で尋ねる。 「袴のこと、です」 実は心織とスーツを見に行った日の夜こと。翔琉と逢っていた俺は何の気なしに、昼間あった出来事を話したのだ。今度、スーツファクトリーに見に行く予定であることも。 その時の翔琉は黙って俺の話を聞いていただけであったが、後日、バイト終わりに迎えに来た翔琉に連れられ、信頼できるという業界一のスタイリストのところへ連れて行かれた。 そこでフィッティングをし断る間もなく、織物や染めを生業としたその道のプロを巻き込み、人脈と費用を駆使しした世界にたった一つ、俺だけにフィットする最上級の袴が誕生したのだ。 翔琉はこれを成人のお祝いとして受け取って欲しいと言った。 そんなことを言われて、否、俺専用につくられたものを断ることはできず、だったらせめて当日の着付けに関しては自分で探す。そういう条件でお祝いをありがたく頂戴することにしたのだが。 結局、自ら着付けして貰えるところを探せず、翔琉に相談しその超有名なスタイリストにお願いすることとなってしまった。 しかし超多忙なスタイリストだ。さすがに早朝でないと着付けの時間は取れないらしい。 前日に翔琉は家へ泊まってそこからスタイリストのところへ行くことを提案したが、それ以上好意に甘えるのも抵抗があったため、俺はせめて自分で行かせて欲しいことを伝えた。
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