Congratulations!!

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翌早朝。 まだ辺りは真っ暗で、真冬の澄んだ空気が耳と鼻に痛い時間に翔琉は俺の実家まで迎えに来た。 休日とあって、高遠家周辺の住宅街もまだ活動を始めている様子はない。 まだ眠い目のまま俺は、温いゲレンデヴァーゲンの助手席へ当たり前のように乗り込む。 「颯斗、おはよう」 いつもと変わらず一部の隙もない翔琉は、挨拶と同時にまだコンビニのホットコーヒーを差し出した。 プレミアムなんとかっていうマシンで淹れるヤツだ。 まだ熱いので、この近辺のコンビニにでも寄ったのだろうか。 コンビニに寄る翔琉なんて想像できないが、そのロゴが入ったカップが証拠を示している。 きっと店員も驚いただろう。 「ありがとうございます。そして、今日はよろしくお願いします」 照れ臭かったが軽く会釈し、お礼を言って受け取ったコーヒーへ口をつける。 「七時から着付けと、その後ヘアメイクにも時間を空けて貰っている」 「え?」 「袴に合うヘアセットもお願いしている」 「え、俺……自分でやろうと思ってましたけど」 戸惑う俺に翔琉は自身の立てたプランを告げた。 「せっかくだから、全てプロにして貰うといい」 驚いている俺を他所に翔琉はそう言うと、欠伸を小さくした俺に到着するまで寝ていて良いと伝え、FMのボリュームを下げた。 車内の温度と耳に心地好いFM、そしてすぐ傍で感じる翔琉の香りに俺はそのまま眠りに着く。
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