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「……やと、着いたぞ」
肩を軽く揺すられ、俺はその震動で目が醒めた。
眼前には若干呆れた顔をした翔琉が、こちらを覗き込んでいる。
「昨夜は遠慮して、独り寝にしたというのに車内でよく眠っていたな」
不機嫌そうに告げる翔琉は、昨夜前乗りできなかったことをまだ少し不満に思っているようだ。
素直に、翔琉が傍にいたからぐっすり眠ってしまったことを伝えれば、その機嫌がすぐ様直ることくらい分かっている。
だが相変わらず、変なところで俺は天邪鬼となってしまう。
「誰かさんが遠慮してなかったら、きっと今日、俺はベッドの上で成人式を迎えてましたよ」
わざと塩対応で返す。
「確かにある意味、ベッドの上で迎える濃厚な成人の儀ができたな。とは言っても、颯斗はもう、成人を迎える前に大人のあれこれをその身体で覚えてしまった悪い子だがな」
翔琉もそれに怯むことなく、更に厭らしく返し、極めつけはその最後にチュッとキスを仕掛けてくる。
「かけっ……!」
酷く赤面した俺に一度翔琉は唇を離す。
「まだ辺りは暗い。それにここはスタジオのある地下駐車場で、この時間に人の出入りはない。安心しろ」
翔琉の言葉に視線を周囲に這わせる。
確かに俺たちは何処かの駐車場の一角に車を停めた状態であり、人の気配はない。
強引に翔琉は唇を重ね、この頃は愛しささえ覚えるこの舌が俺の歯列の隙間から潜り込んでくる。
「……んンっ、ぅ……ァ」
あっという間に翔琉へ身を任せ、朝の熱が鎮まった頃だというのに再び下腹部へ熱が灯っていく。
こんなところで熱を勃たせてしまったら、成人式どころではないというのに。頭の片隅で警鐘がなってはいるが、大好きな者に抱き締められると理性など全て吹き飛んでしまう。
悪い子だ。
先ほど翔琉が言ったこの言葉が頭を掠める。
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