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2. 父の足跡
私はその日の稽古を休み、電車を乗り継いで、鵺山町へとやってきた。
劇団の座長や仲間たちには体調不良と言ってあるが、今まで滅多に体調を崩したことのなかった私を心配しているだろうと、罪悪感が心にのしかかった。
それでも、父に一目会いたいという気持ちの方が大きかった。
父がいなくなってから、連絡は一切とっていない。住所も職場もわからない。
けれども、鵺山町は大して広くもないし、一件ずつ虱潰しに当たっていけばいずれは見つかるだろう……そんな軽い気持ちだった。
会ったら最初に何て言ってやろうか?
いい歳して夢なんかのために家族を捨てて……いや、女優になるという夢を追いかけている今の私が言っても説得力がないか。
私がもし今から家族を持つとなれば、まだ叶えられていない夢を諦めることになるのだろうか?それとも……
私は子どもの頃から女優の夢を抱いていたけれど、大人になって、父や母になってから叶えたい夢を見つける人だっているかもしれない。そんな人たちは、夢を見て見ぬふりして現実だけを見ながら生きるしかないのだろうか?
10年間のうちに、私も価値観が変わった。
あの時のことを謝って欲しいという気持ちは依然として変わらないけれど、今なら父のことを全否定せず、少しは受容できるような気がした。
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