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鵺山町に着いたら、まずは公衆電話ボックスで分厚い電話帳を開き「鬼桐圭介」の名を探した。
プライバシーが尊重される現代、こんなところに載っているはずもないか……とダメ元でページをめくっていくと、見事に掲載されていた。
彼と同姓同名の人物がこんな小さな町に2人以上もいる可能性は極めてゼロに近い。本人で間違いないだろう。
変わった苗字のため、小学生の頃は男子たちからよく揶揄われた。鬼桐という2文字をあの頃は心の底から憎んでいたし、両親が離婚してからは母の姓を名乗れるようになって嬉しかった。
けれども今この瞬間、人探しにおいては平凡な名前よりも個性的な名前の方が特定しやすいということを思い知った。
私は生まれて初めて鬼桐という姓をありがたいと思った。
思いのほか早く突き止められた連絡先。私は恐る恐る電話をかけてみたが、留守なのか呼び鈴が延々と鳴り続けるのみで、いくら待っても出る気配など微塵も感じられなかった。
「直接会って話せってことかしら」
私はスマートフォンで位置検索し、町役場へと向かった。
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