2. 父の足跡

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 「鬼桐圭介?」  白髪混じりの頭を掻きながら、冴えない壮年職員が言った。  「あなたが娘さん?苗字も違うようですが……過去の戸籍謄本など、血縁者であることを証明できるものは?」  衝動に駆られてここまで辿り着いた私がそんなものを持っている筈もない。  赤の他人には簡単に個人情報の開示をしない……客観的に見れば公務員として真っ当な仕事ぶりだけれども、マニュアル通りの塩対応は今の私にとってイライラの種でしかなかった。    「この写真ならどう?私と父が一緒に写っているわ」  「いやー、この女の子があなたと同一人物だとは限らないですし、そもそも鬼桐圭介さんの顔も知らないからこの男性が全く別人であってもわからないですし……こんな昔の写真で判断できかねます」  10年間一切会っていない父。彼が老けて見た目が激変していたとしても過去の面影で気付けるように、親子で撮った最後の写真を過去のアルバムから引っ張り出して持ってきていた。  けれども、その最後の切り札でさえ役所の窓口では通用しなかった。    「もういいわよ!こうなったら自力で見つけ出すまでのこと……」  私はカツカツとヒールの音を鳴らしながら急ぎ足で町役場を後にした。
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