2. 父の足跡

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 「ちょっと、そこのあなた?」  屋外に出て3歩ほど歩いた瞬間、閉まりかけの自動ドアの中から誰かに呼び止められた。  声質で中年女性だとわかったが、聞き覚えのない声だ。振り向いてみると、やはり知らない相手だった。  「もしかして、鬼桐圭介さんの娘さん?」  「ええ、そうですが……」  「さっき窓口で彼の名前を口にしていたものだから、きっとそうだと思ったのよ!」  「はぁ」  「あなた、お父さんを探しに来たんでしょ?だったら場所を知ってるわ。会いに行きましょう!」  女性はそう言うと名刺を渡してきた。  「あの……」  「私は前野恵子(まえのけいこ)。ケースワーカーよ。さあ、車に乗って」  「は、はい!」  あまりの勢いに、促されるままオンボロの軽自動車に乗り込んだ。  前野さんが運転する車両は山道を猛スピードで走り、やがてこの町の中では割と大きめな建物へと辿り着いた。  「ここって、もしかして……」  「この町で唯一の"病院"よ」  診療所規模の医療機関であればいくつかあるようだったが、病院と呼べる規模のものはここしかないらしい。  ここに父がいるということは、患者になっているか医療従事者になっているかのどちらかなのだろうが、後者でないということは容易に想像できた。
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