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「それは、お約束できません。」
「えっ、」
男性は、私の言葉に瞳を大きくさせた。
「だって、貴方は私の名を知っていますが、私は貴方のことを何も知りません。こんな関係から始まって今後どのような関係になるのかも分かりませんから。」
「…………うーん、それもそうだが」
「まずは貴方の名前を教えて下さい。」
私は黒目をしっかりと見つめ、男性に問うた。
「名は、ジェレミー・アーヴィング」
「何故私のことを知っているのですか?」
「あぁー……実は泣いている君を見て一目惚れをした。それで探偵に調べさせた。」
「えっ!?」
「あと、先程いろいろと格好良い事を言ったが、君に会いたくてあの劇場を続けていることも事実だ。」
開けなくていいパンドラの箱を、自ら破っていくジェレミーに驚くばかり。
「最後に一つ、その隠している瞳は何なんですか?」
この勢いで行けるだろうと思い、質問をしてみたが、彼は瞳を閉じて溜息を吐いた。
(瞳のトリックまでは教えてくれないか……)と、肩を落とした時、彼は隠していた瞳からタオルを外した。
「あっ……」
その途端、見てはダメだと思うのに見てしまう彼の瞳。
オレンジと水色のコントラストが目に飛び込んできた瞬間、再び脳裏に犯されている自分の姿が写る。
その途端、疲れ果てていた体が火照りだす。
「はっ、はっ、もっ、これ……やめて 下さい……なんで、こんな風に……」
熱に浮かされる私を抱き締めて、彼は言った。
「僕の母は、サキュバスでねぇ、彼女の瞳を見るだけで人間は堕ちた。僕はそれを片目だけ受け継いたのだよ。」
「えぇっ!」
とんでもない事を答えながら、ジェレミーは私にキスをする。
最後の質問はしなければ良かったと私は後悔したのだった。
end.
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