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その行為を、男性は拒むことなく静止し、片方の目で私を見つめている。
蝶々結びの紐は容易く外れて、布の裾が広がり、
中身の分からないボックスを開けるように、恐怖と好奇の心を持って布の摘み、引っ張った。
その刹那、測ったかのように彼の顔にライトが当たる。
「……!!」
目の前に現れたのは、三十代半ばの男性だった。
雪のように白い肌に、項で結ばれたブロンドの長髪、通った鼻筋、
そして隠されていたもう一つの瞳。
その瞳に私は見入った。
瞳孔の縁に微かにオレンジが入り、その周りはブルーともグリーンとも言えない虹彩が広がる。
男性の瞳から目を離すことが出来ないでいると、心臓が拍動を強め、急に息がしづらくなり、
身体の奥が着火されたかのように火照り出す。
そして自分の脳内へと、流れ込む映像。
目の前の男性に対して脚を広げ、貪るように、壊れるように、喰べられている自分の映像が浮かぶ。
己の思考回路が、彼を欲するように動き出す。
私は何が起こったのか分からず、口を両手で塞ぎながら、困惑する瞳を男性に向けた。
彼は目を細め、片方の口角を上げると、静かに顔を近づけて耳元で囁いた。
「僕は悪くない。これは君が選択した。」
直接、頭まで響く 低い声。
「んっ!」
それだけで体が反応してしまう。
彼は立ち上がると私の手首を掴んで引っ張り劇場の外へと出た。
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